テクニック
「数的優位を作れ」と指示された子どもに伝えたい3つのこと
公開:2015年8月27日 更新:2020年3月24日
あなたは、お子さんがコーチから「数的優位を作れ」と指示されている場面に遭遇したことはありませんか? とくに高学年になると、コーチがそのような指示を出すケースが増えます。そのとき戸惑うお子さんにあなたはどのようにアドバイスしますか?
サッカーサービス社がスペインの育成メソッドを基に独自開発したトレーニングDVD『知のサッカー』。ポール・デウロンデルコーチがその一部を解説する説明会が7月に開催されました。テーマは個人戦術『マークを外す動き』とチーム戦術『数的優位』。どちらもジュニア年代の選手たちが習得すべき重要な項目です。そこで全2回に渡って、それぞれの内容を要約して紹介します。後編となる今回は『数的優位』について掘り下げていきましょう。(取材・文 木之下潤)
<<前回記事:「マークを外せ」と指示されたら思い出したい、たった2つのこと
■数的優位は個々の意識次第で常に作り続けられる
「数的優位とは、特定のスペースで相手よりも味方の方が多い状況を作り出すこと。それによりチームに有利な状況をもたらすこと」
説明会の講師を務めたポール・デウロンデルコーチ(以下、ポールコーチ)はこう話を切り出しました。このテーマについては考え方が2つあり、『攻撃』と『守備』だと続けました。
【数的優位/攻撃】
1.オフェンス時に数的優位を作る(主に、受け手側)
2.数的優位の状況を生かす(主に、出し手側)
【数的優位/守備】
1.ディフェンス時に数的優位を作る(ボール保持者の周囲の選手)
2.数的優位になるまで相手の攻撃を遅らせる(ボール保持者に対応する選手)
ただ攻撃や守備に関係なく、数的優位は個々の選手が意識して動けば常に得られる状況だから、「自分の働きでチームを助けるんだ」というハートを持ち続けることが大切だと言います。
ポイントは相手よりも数的不利、同数、優位という3つのうち、「今、どの状況なのかをいつも認識しておく」ということです。それによって対応がさまざまに変わってきます。さらに、サッカーは攻守が目まぐるしく変化するスポーツ。チーム11人が一丸となって戦う以上はピッチに立っている間、頭を休めることはできません。
だからこそ、『数的優位』に対するアプローチはボールに絡まない選手の意識の高さで、チーム力を上げることも下げることもできます。そこを十分に理解し、コーチがジュニア年代から選手たちに「今、どんな状況なのか」を問いかけ、さまざまな状況における数的優位の考え方や作り方、生かし方を蓄積し続けることがとても重要だと教えてくれました。
■受け手と出し手がお互いに数的優位を意識してプレー
まず攻撃においての数的優位のポイントを、ポールコーチはこう語ります。
「ボールが関係するプレーゾーンで、どう数的優位を作るのか」
『オフェンス時に数的優位を作る』というのは、主に受け手側の動きにかかわることです。そこには対戦相手のフォーメーションとの噛み合わせなども考慮に入ってきます。しかし、考え方はシンプルです。DFライン、サイド、中盤、前線……、どのエリアで数的優位を作り、攻撃を仕掛けたいかでポジションのとり方が変わるのです。
目的は、自分たちがイニチアシブをとること。だから、優位にボールを支配したいエリアで相手ディフェンスよりも多く選手を保つようにポジションを調整することを続けるのです。
たとえば、『1-4-4-2』のフォーメーションで試合に臨み、センターバックがボールを奪ったとき。対戦チームが2トップの場合は数的同数になります。すると、そこでは1対1の状況になるため、うまくボールを支配できません。
そこで、ボランチの選手がセンターバックの間までポジションを下げ、数的優位を作り出します。そうすればパス回しをスムーズに行うことができます。これはバイエルン・ミュンヘンのMFシャビ・アロンソがよく見せるプレーです。
しかし、大事なことはプレーを途切れず継続させること。シャビ・アロンソはボールをさばいた後、即ボランチの位置までポジションを上げていますし、彼が下がればそのエリアでは数的不利の状況が生まれているので、インサイドハーフがその穴を埋めたり、サイドバックがオーバーラップを仕掛けて別のエリアにボールを引き出したりしてプレーに継続性を与えています。
次に意識すべきことは、『数的優位をどう生かすか』です。これは主にボールを持った選手のアプローチが重要になります。パスを受けた瞬間はフリーだから自分は優位に立っています。しかし、そのぶん味方の選手にはマークがついている状態だから、プレーに継続性を与えるには敵の注意を自分に引きつける必要があります。
だから、ボールを運ぶことで敵の注意を引きつけて味方へのマークをはがし、フリーの状態を作りながらゴールに向かって進みます。ここでは、ボールを持った選手はボールを運んでディフェンスを引きつけ、周囲にいる攻撃の選手にアドバンテージを作り出すことが大事になります。DFライン、中盤、前線とそれぞれ突破するごとに生まれたアドバンテージをどう次の攻撃選手につなげるのか。『数的優位を作る』、そして『数的優位を生かす』ということの連続が自分たちにとってイニチアシブをもたらすのです。
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